2007 Snipe World Championship Report

SiltronicJapan(株) 安部賢司

はじめに

9/10〜15に掛けて、ポルト(ポルトガル)にて世界選手権が行われ、日本より8チームが出場しました。この出場権は昨年の全日本選手権の上位選手に与えられました。

私は今回の世界選手権の総合結果は準優勝となりましたが、この結果は突発で生まれたものではないと思っております。背景にはMade in Japanセールのセール性能の向上があり、ボートスピードは他国を圧倒するものでした。

 

Report

私たちは他の日本チームより約一週間遅れて現地入りしました。現地入りしたときの他チームの顔色は良く、プレワールドに参戦し他国勢を日本が圧倒したからのようでした。特に白石・中村組(ノースセール・ジャパン)は、殆どのレースにてトップ集団に位置していたとのことでした。他チームの顔色をみて私たちも安心しました。

現地入りし4日間の事前現地入り調整練習をする予定でしたが、私たちが到着すると同時にそれまで吹いていた強風がピタッと止んでしまったようです。風が無いことで4日間のうち練習できたのは初日の3時間のみという異例の事態に陥りました。事前調整できないというのは私たちにとってストレスのかかるものでした。理由は、過去に使用したことの無いタイプでの参戦を決めていて、セールの特性を感覚で理解できない状況での選手権になってしまったからです。この間、私は頭の中でセールカーブをシュミレーションし、沢山の状況を想定していました。

大会開会(9/10)

そうこうしているうちに開会式の日を迎えてました。ちょうどこの日、偉大なる先輩が日本で亡くなりました。二宮孝雄氏が倒れ、息を引き取られたようです。二宮さんは過去に私たちのクラスであるスナイプ級で西半球選手権を優勝した唯一の日本人です。私は一度食事を一緒にさせて頂いたことがありますが、非常に豪快で兄貴分肌の方でした。(二宮さんのご冥福をお祈りいたします。)

開会式で松崎さん号令の元『君が代』を日本チームで大声で歌いました。歌いながら私は気持ちが高ぶり『世界一』を意識したのを今思い出します。実はこのときまで優勝をまったく意識しておらず、トップ10に入ることを目標にしていました。

第一レース(9/12)

前日の11日に無風のため、レースが出来ませんでしたので一日遅れての第一レースでした。私の精神状態はヨットに乗れることの嬉しさで溢れていました。(ずっと無風でヨットに乗ることが出来ず我慢我慢でしたので)そんな心境でレーススタート!!W旗(WINDWORD/LEEWORD)のコースでしたが、最初のマークを2位回航。そのまま2位で、4マークでついにトップに立ちました。残すはフィニッシュ。2位以下を大きくリードしそのままトップでいけると思ったのですが、初歩的なミスをしてしまい2位でゴールしました。また、他の日本チームは3位に梶本・今井組(三菱重工・同志社OB)4位に児玉・田中組(豊田自動織機)9位に松崎・杉浦組(豊田自動織機)とシングルに4チームが入るという活躍ぶりでした。

2レース(9/13)

この日も艇が良く走りました。コースはW旗(WINDWORD/LEEWORD)。1マークからトップでフィニッシュまでトップでした。前日の失敗が生きたレースでした。この2レースを終えて総合トップにたつことができました。陸に帰ると現地の子供たちが私たちのボート(トップ艇)に触れようと必死でした。中には艇に乗り込んで、他の子供に自慢する子供たちの姿も。そして私は現地のマスコミのインタビューや、トップ賞の表彰、スピーチと二日前とは全く違った世界にいました。

このレースの日本チームは私たちのほかにシングルに4位武居・伊藤組(アイシンAI)が入りました。

総合で、1位に私達、4位に児玉・田中組(豊田自動織機)5位に松崎・杉浦組(豊田自動織機)と上位5チームに日本チームが3チーム入り込むというジャパンパワー爆発の予感でした。ここから私たちの本当のレースが始まった気がします。

3レース(スタートのみ)(9/14)

レースこそ実施できませんでしたが、大会運営はレースに向けたスタートは4回試みました。その際にあまりにゼネラルリコールが多いので何度もやり直しとなったのです。そのスタートの中でZ旗ルールが用いられました。このZ旗ルールに多くのチームが引っ掛りました。私たちもその中の1チームでした。日本チームの中では他に武居・伊藤組(アイシンAI)長谷川・田中組(福岡大学)私たち3チームはすぐさまプロテストに抗議書を作成提出しました。理由はフェアな条件でのスタートではなかったためです。風が極端に弱い中でスタートをさせられたのでボートをコントロールできる状態ではなかったと。(この抗議は翌日、審問の結果、却下されました。)

3レース(9/15)

今世界選手権は3レース以上のレースを持って成立する事となっていました。上記のようにまだ2レースしか成立していなかったので、どうしてもあと1レース必要でした。しかし,連日同様に朝から風がない。風を待ってまって制限時間ギリギリの時間に風が来ました。

3レーススタート。コースはW旗(WINDWORD/LEEWORD)。前日のZ旗ルールで20%のペナルティーを持っていた私たちは少々消極的なスタート。これまでの総合順位から見て優勝の行方は,私たちか総合2位のTomas(USA)のどちらかの手にといった状況でした。レースが始まると流石USAです。優勝トロフィーをUSAに持って帰るために彼らのプライドが私たちの行く手を阻みます。どこに行ってもUSAチームが私たちをカバーしてくるのです。知らない人が聞くとなんてズルイと思うかもしれませんが、これがヨットレースです。そんな中私たちは最初のマークを25位で回航し、ここまで総合2位だったTomas(USA)は、7位を走っていました。私たちはTomasのひとつ後ろでゴールし、昨日のペナルティーに対する抗議が通れば優勝できる状況でした。ですので私たちは順位を8位まで上げる必要がありました。私たちは途中呼吸をすることを忘れていたくらい必死でした。その後私たちは2マークを15位、3マークを14位、4マークを10位で回航。残すは最終レグ。Tomasが近くに見えていました。しかし彼は7位から4位まで順位を上げていました。彼は非常にクレバーで私たちのポジションをしっかりカバーしていて、4位のポジションを落としても絶対に私たちに抜かれないポジション取りでした。流石です。結局彼は4位でゴール。私たちは9位でゴール。この時点で私たちが優勝するには彼がリコールである事以外ありませんでした。もちろん彼はリコール等無く、総合優勝は彼の手に収まりました。私たちは抗議審問の結果関係なく総合2位が確定しました。レースを終えると、Tomasに賞賛の握手を交わしに・・・。彼は『レース中とても怖かった。それは君が信じられないくらいに順位を上げてきていたからだ。』と語りました。私も『優勝おめでとう。いいレースだった。君のレースは、世界一になるべくしてなったすばらしいレースだ。』とコメントをささげました。

閉会式までの間、私たちもいろんな方々から賞賛の言葉をもらいました。その中に尊敬するスナイプのスーパースターParadeda(BRA)や、現西半球ChampionのPabro(URU)からも。彼たちは『お前が一番早かったと思ってる。次にお前とレースできるのを楽しみにしてる。』と、いってくれました。私にとって見れば、スーパースターの彼らと肩を並べることが出来たのが最高のステイタスです。

まとめ

期間中ずっと自分に言い聞かせてきた言葉があります。それは『自分自身を信じること』。この言葉は自信を持つという言葉より具体的で私にとって非常に助けになりました。レース最中や事前調整時に目に見えるもの、耳に聞こえてくるものに流されず、自分がこれまでに経験で得た感覚を優先する。この言葉があったからこそ、実行できたからこそ好成績につながったものと考えています。

次回2年後の世界選手権(San Diego, USA)までに今回不足していたものをしっかりと分析・改善し、今回の感覚を本物にするために自分自身を磨き上げていきたいと思っています。

 

RESULTTotal 57boat

 1ST Tomas Honos&Enrique QuinteroUSA

 2nd Kenji Abe&Hiroshi Yamachika(シルトロニック・ジャパン)

 3RD Peter Commete&Sheehan CommeteUSA

4th Augie Diaz&Mark IveyUSA

5th Paburo Difazio&Eduardo MediciURU

6th Bart Bomans&Jill Ponet(BEL)

7th Diogo Cayolla&Rui Casihilho(POR)

8th Brian Bissell&Danny Pletsch(USA)

9th Gongaro Guerra&Tiago Guerra(POR)

10th Alexandere Paradeda&Pedro Tinoco(BRA)

          

14th Shigeru Matsuzaki&Hiroyuki Sugiura(豊田自動織機)

15th Shoji Kajimoto&Nobuyuki Imai(三菱重工&同志社OB

16th Baharu Kodama&Toshihiko Tanaka(豊田自動織機)

25th Junichiro Shiraishi&Takumi Nkamura(ノースセール・ジャパン)

31st Tokuma Takesue&Kazuhiro Itou(アイシンAI

39th Yusuke Shindo&Kaname HayashiADプランナー&コニカミノルタ)

42nd Takashi Hasegawa&Yusuke Tanaka(福岡大学)